衣装紹介

西行寺幽々子

初登場作品:東方妖々夢

acha

▼衣装を作る時

最初に決めるのは、ほんのりとした方向性だけ。デザインの本質は、使用する布との出会いの中で自然に形づくられていきます。
今回出会ったのは、水色を基調とした光沢のあるチャイナブロケード。黄・桃・紫といった気品ある色が織り込まれた模様に、一目で心を奪われました。色味、柄、質感——そのすべてが魅力的で、迷いなくこの布を選びました。
このお気に入りの布の魅力を引き立てるため、小物の色合いも慎重に選びつつ、最終的には「自分が可愛いと思うかどうか」という直感を大切にしました。
たとえば、首元から覗く紺色のリボンがポイントだったため、半衿は使わず、あえて重ね襟のみを選択。さらに、全体の印象がぼやけないように、重ね襟には朱赤を採用し、ほどよいアクセントを加えました。
帯は単色ながらも、光の加減で多彩な表情を見せるものを使用。結果的に、チャイナブロケードの裏地に使われていた紫と色味が響き合い、全体としてまとまりのある仕上がりになったと思います。
「こういう意図があった」と理由づけを後から見つけることができる——それも、東方アレンジ衣装の面白さのひとつだと感じています。

▼衣装が主役

着物を身につけると、自然と所作が整い、美しさがにじみ出るように感じます。
その姿には、日本ならではの美意識が凝縮されているようにも思えます。
今回使用したのは、少し派手な布。
落ち着いた佇まいとのコントラストが独特の魅力を生み出し、そのアンバランスさを楽しみながら仕上げました。
「東方アレンジ衣装」という免罪符を手に、自分の「可愛い」と「好き」をぎゅっと詰め込んだデザインです。
しかしながら、幽々子の持つ気品をイメージしつつ、華やかさと優雅さが共存するような雰囲気を大切にしています。
たとえば、フリルは襟の片側にだけ添えるなど、過剰な装飾は避け、布そのものの美しさを引き立てることを意識しました。
少し大袈裟かもしれませんが、私にとって衣装こそが主役。その想いが込められるからこそ、東方アレンジ衣装は特別なのだと感じています。
Photo:kaz(@kaz36452464)

▼衣装の持つ表現力

選んだ布には光沢があり、陽の光の下、夕暮れ時、月明かりの中——どんな光にも呼応して、違った表情を見せてくれます。
中でも、マジックアワーの絶妙な空を背景に浮かび上がる幽々子の衣装は、特にお気に入りです。
闇に溶けきらず、どこかに在り続けるその姿は、まさに亡霊のようで。
衣装制作も、写真の現像も、どの表現にも正解も間違いもなくて、そのすべてが自分の思う「正解」になりうる。
そんな多彩な表現を受け止めてくれる東方アレンジ衣装は、本当に奥深いと感じています。
Photo:さと(@sato_k20)

▼衣装のデザインは1つとは限らない

幽々子の衣装は、着物のように見せるためにタイトスカートで仕立てていましたが、ワイヤーパニエに対応させるため、シルエットの異なるスカートももう1着製作しました。
その日の気分や、参加するイベントに合わせて、自由に組み合わせを変えられる仕様になっています。
着るたびに帯を替え、小物やチャームを少しずつ足していき、今の形になりました。
東方アレンジ衣装に「完成」はなく、終わりのない楽しみが広がっています。
Photo:alice(@lovelive_alice)

▼あとがき

「可愛い」を追い求めるほどに、完成したはずの衣装がどこか未完成に思えてくる——それは、いつも私にとって嬉しい誤算です。
派手な布で仕立てた衣装が好きだと気づいたのも、思い返せばこの幽々子の衣装がきっかけだったように思います。
東方アレンジ衣装の魅力は、一言では語りきれません。
布の質感、衣装のデザイン、キャラクターの性格や背景——バラバラな要素を一つに繋ぎ合わせるような感覚こそが、私にとって最も面白い瞬間です。
「ひらめき」や「直感」、そして「考察」。
それらのピースがひとつのカタチにまとまる時、東方アレンジ衣装の奥深さと魅力を、改めて実感します。
Photo:てん(@WfstenCam)